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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(オ)123号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人辯護士上田直吉の上告理由について。

論旨は、判例違反をいう点もあるが、判例を具体的に示していないから、その点は、採用できない。また、違憲をいうが、その実質は、本件遡及買収計画は、第一に自作農創設特別措置法六条の二所定の小作農の買収請求がないから先決的要件を充足しないし、第二に住所の変更のない上告人を住所の変更ありと附会して買収計画を樹立している違法があるというに帰する。しかし、原判決は、挙示の証拠に基き適法に上告人の二男正晃が、昭和二〇年一一月二三日当時は上告人と同居していたが、その後同二一年秋頃より同一村内で上告人と別居するに至つた事実を確定した上、右事実は、同法三条の適用上所有者が変更したことと同様の結果を生じたものというべきであるから、同法六条の二により同居当時の事実に基いて買収計画を定めることができるものと解するを相当とする旨判示している。そして、右判示は、正当と認められるから、所論第二の主張は採用できない。

次に、原判決は、上告人自身の所有権及びその土地の小作農に変更がないから上告人所有農地の小作農は遡及買収を申請する適格がないとの上告人の主張に対し、前段認定のごとく上告人所有地の小作農は遡及買収の有無につき右正晃所有農地の小作農と同じく利害関係を有しているし同法六条の二が前者の申請を禁止する趣旨とも解し難いから、右主張は採用できない旨判示している。そして、この判示も正当と認められるから、所論第一の主張も採用できない。

よつて、民訴三九六条、三八四条一項により、本件上告を棄却し、訴訟費用につき同九五条、八九条により、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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